「青空」を書きながら常に頭の中に思い浮かべていたことがあります。猫と暮らした時間。犬と暮らしている今の時間。彼らはどうしてあんなに人間を信じてくれるのだろうか。ホントはぼくのことなんて嫌いなのだけれどゴハンをくれるし、屋根のある生活をさせてくれるから居てくれてるだけなのだろうか…。時々そんなことを考えます。そして一度でいいから話をしてみたいなーと思います。彼らの言葉を、本音を聞きたいなーと。
この想いを込めて麦と小太郎にたくさんの言葉を喋ってもらいました。
書き上げてからが、さあ大変です。
劇場と公演日程は決まっているのですが出演者は誰ひとりとして決まっていません。役者さんの事務所に連絡をしますと返ってくる言葉は決まっていました。「その時期は他に仕事が入っておりまして」とか「現在、他からオファーが入っていまして」とか「随分と急ですね」とか「うちの◎◎は朗読をやったことがないので申し訳ないのですが…」。と、こんな感じでした。それでもぼくは諦めません。では台本だけでも呼んでください、と頼まれてもいない台本を勝手に送るわけです、強引です。
しばらくしますとこのような連絡がやってきました。「ダメダメだーめ、こんなのを読んだら出すしかないじゃない」とか「戦争の悲惨さを訴えるためにやらせてほしい」とか「撮影中のドラマにかけあってスケジュールをもらってくる、いつまで待てるの」とか「◎◎は犬飼ってるのよーやらせちゃうの、絶対に、やらせちゃうから」。
ほとんどの人たちが台本を読んで出演をしてくださいました。これほど嬉しいことはありません、ホンに納得してもらえたのです、これは作家冥利でした。
出演者の人たちのお家には犬がいたり猫がいたり、以前犬を飼っていたり猫を飼っていたりする人が多く、「青空」に賛同してもらえたと思っております。どの座組でも見られた稽古休憩中の風景はペット談義でした。
誰もが幸せを望んでいます。言葉を喋れないペットを愛しています。
戦争がもたらした悲惨な過去を、戦争体験者ではない我々が語ることはとても大切なことだと思っております。
「青空」を通して、皆さんに何かを感じてほしいのです。
そして感じたことを一人でも多くの人に伝えてほしいのです。
真っ青な空にはロケット弾も爆撃機も存在しない世の中を願います。